いつのころか、会社のお昼時にヤクルトの販売員が来るようになった。
重たい荷物を抱えながら、一生懸命ヤクルト等を販売している。
自動販売機があるので、ヤクルトを買う積極的な理由はなく、腸内環境も今のところ特に問題はないのでニーズはなかった。
むしろ興味があったのは、なぜ、ヤクルトはこのような販売方法をとったかだ。
毎日、毎日販売員が来る。
購入するのは、ほんの数人。
はたしてビジネスになるのか……。
売り上げシミュレーション
1社の訪問に10分程度かけ、1000~2000円売れたとする。
移動時間が半分として、240分の販売時間があったとすると、
1000~2000円x24=24000~48000円。
人海戦術で全国中、特にオフィスが集まるところで販売すると、成り立つビジネスに思えてきた。
このビジネスの神髄は人の情
この訪問販売の鋭いところは、まさしく人を使っているところだ。
人は情の生き物。
さすがに、重たい荷物を持ってせっかく会社まで来ているのに、一回も買わないのは失礼な気分になってくる。
特に、暑い日も、寒い日も頑張っている。
そこで、せっかくだからと、1つ買う。
「ありがとうございます!」と、うれしそうな顔をする。
一つ買ってしまったら最後、次に買わなくなる方が、状況的におかしくなるのだ。
実際、周りを見ていると、1週間に1回か2回100円~200円払い、ヨーグルトやヤクルトを購入する。
なるほど、このビジネスを定義すると、
「可哀想になってつい買ってしまったら後戻りできないビジネス」なんだと妙に納得してしまった。
人の心理をよく知っている人がこのビジネスモデルを始めたのだろうと勝手に想像した。
ヤクルトレディーのホームページの中で、
ヤクルトは企業の健康づくりをサポートしています。
と謳い、
ヤクルトレディがお届けします
と書いてあるが、助詞を一つ変えた方がよさそうだ。
実際の、ビジネスモデルは、
ヤクルトレディーをお届けします。だ。
現に、先のホームページのタイトルは、
ヤクルトレディのお届け 企業・団体様(オフィス)へのご訪問
となっている。(2016年9月7日9:30分時点)
「ヤクルト」のお届けではなく、「ヤクルトレディのお届け」と書いてある。
悲しい人間の性
さて、販売員は定期的に変わる。
成績で入れ替えなのか、個人的な理由なのかは不明だ。
人の性で仕方がないと思うが、たしかに外見で選んで購入している人も多い。
かわいい女性だったり、自分の娘に近い年代の販売員が来ると、つい協力してしまうケースが多い。
「きゃしゃ」なのに 重たい荷物を抱えていると、男ごごろがくすぐられる。
たしかに、可哀想だから買うというのは、販売員のメンツは保たれる。
しかし、実際は商品が哀れである。
会社に入れていること自体、絶好のチャンス
一種独特の販売方法だが、なぜ、せっかく会社の中に入れているのにヤクルトだけにこだわるのだろう。
会社に入れていること自体異例なのだから、この機会を最大限に生かすべきだ。
普通であれば門前払いされ、会社内に入ることはできない。
オフィス内に堂々と入れるのは、保険の方か、ヤクルトぐらいではないか。
ヤクルトは、腸内を調整するビフィズス菌で有名だが、おそらく、化粧品販売も、健康関連でも良い。
会社に訪問しているのだから、御用を聞いて、代行してあげるのが良い。
「販売員の移動自体」に付加価値を付けるサービスもできるはずだ。
会社帰りの夕方に、お買いものするのが面倒な人向けに、代行サービスもよいだろう。
郵便物もそうだ。1枚の手紙のために、わざわざ郵便局に行くのは面倒だ。
出し忘れてカバンに入ったままの雑用を抱えた人は多い。
考えれば、相当なサービスができることが想像できる。
グリコのオフィスの配置販売のお菓子もあるが、そういったビジネスモデルとコラボしてもよいはずだ。
進化した御用聞きビジネスはこれからチャンス!
「御用聞き」は古臭い言葉だが、ビジネスは正の上昇スパイラルで進化していく。
昨今のように人間を介さないネット売買が増えた今だからこそ、「泥臭い進化した御用聞き」にビジネスチャンスはあるのだ。
この訪問ビジネスがどのように進化するか、観察するのが楽しみだ。
さあ、今日もヤクルトを買おうか。
蛇足
父はよくヤクルトを焼酎に混ぜて飲んでいた。味見したのだが、これがおいしいのだ。炭酸を入れると、もっとおいしくなるかもしれない。