美容業界には様々な問題やクレームがある。
例えば、カットが下手・シャンプー、カラーリングが下手、パーマが下手、マッサージが下手、スタインリングが下手などきりがない。トップスタイリストは好きな時間に予約がとれないとか、営業時間が限られているといった問題もある。
こういった課題を解決すれば、良いお店になるかもしれないがイノベーションは起こせない。
今後美容業界でイノベーションを起こすには、新しい時代にあった発想が必要だ。
そこで、美容業界の経営戦略を考えてみた。
美容業界の課題は、「人材確保」・「人材育成」、そして「集客」だ。
人材を確保しても、すぐに離職する。技術を教えたらすぐに独立される。技術の伝承そのもののが困難であったりもする。そして、競争激化による集客の困難さがある。集客するために価格を下げ、利益を圧迫する。結果、安賃金で、夢の追究の前に、人が集まらない。
イノベーションを起こすための問い 「美容室の本質は?」
まず美容室の本質を考えてみよう。なぜ、我々は美容室に行くのか?美容室にいく本質的なニーズは何か?
かっこよくなりたい、かわいくなりたい、すっきりしたい、モテたいなど様々ある。
飲食が「味」ならば、美容室は「美」の追求である。「美」には、様々な意味があるが、仮に、ヘアスタイルの事だと仮定しよう。ヘアスタイルと言っても、かっこいいヘアスタイルや、流行のヘアスタイルの技術ではなく、「お客様が納得する技術」と定義しておく。
すると、まずはじめに、「お客様が納得する技術」を持っていることは当たり前だ。しかし、その技術すら獲得していない美容師が多い。味がおいしくない飲食店と同じだ。
お客にアンケートを取ると良いだろう。ほぼ9割以上、切ってもらった髪形に納得していないはずだ。パーマに至っては、ほとんどの客が納得していないと推測している。
暗黙知は伝承しずらい
暗黙知とは、言葉で説明しにくい技術のことだが、特に、カット技術は伝承が難しい。伝承が難しいので、失敗と経験を重ねながら蓄えていかなければいけない。時間がかかる。先輩のやり方を見て覚えられるものでもない。人によって、髪質や生え方がバラバラ。同じ人でも、季節や体調や年齢によって髪の質感が変わる。カットする人が感じる手先の感触は、その人しか味わえない。
自転車の乗り方すら口頭で説明しずらいように、ヘアカット技術の教授はもっと難しい。
だから、そもそも技術の習得には圧倒的な経験が必要だ。しかし、お客様からのクレームを恐れ、なかなか技術を磨く練習ができない。従業員どおしやその友達だけでは数がたりない。技術向上のためには圧倒的な量がいるのだ。また、そもそも、カットをさせてもらえるまでに相当な時間がかかる。これ自体が大きな問題でもある。
常識の裏に潜む宝~美容業界の常識とは?
常識の裏に、イノベーションを起こすビジネスチャンスが潜んでいる。
では、美容業界の常識とはなんであろう?
- 髪の毛は、人が切るもの
- 髪の毛は、はさみで切るもの
- 髪の毛は、美容室で切るもの
など様々ある。
ここで、ウォーレン・バーガーの「Q思考」をしてみる。
Q思考は、簡単に言えば、以下の3つの問いである。
-
なぜxxxだろう
-
もしも、xxxならどうなるだろう?
-
仮にできるとしたら、どうやるのだろう?
- もしも、職人技を持った機械が髪の毛を切ったら?
- もしも、はさみ以外のモノで髪の毛を切る方法があったとしたら?
- もしも、場所を選ばず、理想の髪形をどこでも再現できたら?
仮に、できるとしたら、どうやったら実現できるか?
美容業界もフランチャイズ化している
お客が美容室に行く本質的なニーズが「ヘアスタイルの納得感」だと仮定すると、「お客様を納得させる技術」には時間がかかり過ぎるという問題がある。
ここが業界の固定観念であり、ジレンマだ。すでに、それに気づいた経営者は技術に頼らないフランチャイズ的な動きをして儲けている。
ファッション雑誌と策略しているか知らないが、熟練のカット技術が必要にならない髪型を意図的に流行らせていると憶測している。
さて、熟練技術の伝承は難しいが、難しいからこそ、柔軟発想をしてみたい。たとえば、人工知能を使って熟練技術をデータ化し、クラウドで技術を蓄積し、物理的なマシーンに落とし込むビジネスモデルだ
人工知能を使って熟練の技術を世界中どこでも再現する
世界で儲かる美容業態のコンセプトを次のように設定してみた。
自分が気に入っている髪形を世界中どこに行っても再現できるマシーン。
人工知能を使ってありとあらゆる熟練のカット技術を覚え込ませる。髪の癖や生え際、毛根の生え方、頭の形のデータもたくさん登録する。
そして、ある機械を創造する。このカットマシーンは、吸引器で全ての髪を伸ばし切った状態で、3本以上のはさみが同時進行で髪を切っていくイメージだ。必ずしも、「はさみ」である必要もない。よりお客様の納得のいく髪形を作れる道具や方法であればカットの仕方は何でも良いのだ。柔軟発想ができるダイソンあたりとコラボすると良いだろう。
このマシーンには、シャンプーもスタイリングも同時に行える。美容業界の見習いはシャンプーを行うが、それが嫌で離職する人も多い。シャンプーさえさせてもらえないところも多いだろう。確かに、シャンプーで、頭の形を覚えたり、髪質を勉強できるが、今の時代には合っていないのかもしれない。
今は、従業員の忍耐力よりも、時代がスピーディーさを求めている。従業員も、顧客も待ってられない。技術の伝承も同じだ。本物の技術の伝承には、下積みを得て、心から鍛えなければいけないが、それすらも、固定観念に捉われている。
いずれにせよ、見習いが「つまらない」と思う仕事をさせるほど、離職し、経営そのものが成り立たなくなる流れは変わらない。ジレンマが続くならば柔軟発想するしかない。こういったギャップが発生している時は、ドラッカーも言うように、ビジネスチャンスがある。
三位一体の美容業界のビジネスモデル
新しい美容業界のビジネスモデルは、三位一体で構成する。次の3つだ。基本的に、このイノベーションが起きると、今までのように美容師が髪を切ってお金をもらうことがなくなる。髪を切るのはマシーンだ。家電製品になっているかもしれないし、コンビニに設置されているかもしれない。場所も選ばない。世界中どこにいても、マシーンがあれば、自分が一番好きな髪形を再現できる。
あるテレビで、スタイリストが「前と同じ髪形にしてほしい」と言われると辛いと言っていた。なおさら、それが確実にできるマシーンは頼りになる。
カットマシーン(ハード)
- シャンプー
- カット
- ヘアスタイリング
物理的なマシーンだ。
熟練技術・各種データ(ソフト)
- 頭蓋骨・頭皮・髪質データ登録
- 熟練技術のデータ登録・動画データも
- 過去のヘアカタログすべて登録
データを登録するソフト部分だ。
AI・人工知能(プラットフォーム)
- 似合う髪形の提案
- 適切なシャンプー・トリートメントの提案
- ハゲ防止提案
- 予約システム
- 切る前に事後ヘアスタイルの確認
スマホで言えば、i-tuneであったり、グーグルプレイだ。
髪の毛でアレルギー反応を調べることもできる。そういったサービスを組み込んでも良いだろう。
具体的なマーケティング方法
まず、データの蓄積をする。髪の毛に関する過去の雑誌やヘアカタログ情報のすべてを読み込ませる。
また、世界中の熟練の美容師の技術をすべて覚え込ませる。ディープラーニングを使って、精度を高めていく。
美容師の見習いも、早く熟達した腕を磨くために、無料でカットを行う。無料マーケティングでお店に人を呼ぶ。見習い美容師は顧客の家に積極的に訪問してもカット数をこなすと良い。
美容師は失敗やお客様からのクレームを恐れ冒険をしない。当たり障りのないことを言うことで、仮にカットが失敗しても、「お客様のご要望通りに切りました的」に逃れようとする。それではお互いにとって良くない。
技術は強い目的意識や理念を持つほど早く向上する。「顧客が納得する髪形の100%実現」という強い理念を持った美容師は強い。イメージだけでは技術は進化しないし、ましてや、顧客のクレームを恐れていては、技術レベルが上がらない。
そこで、美容師も顧客も残念な思いをしないために、「美容師完全おまかせヘアカット」なるサービスを行い、すべて無料で行うと良い。その変わりノークレームだ。髪形を気にしていない人口は案外多い。それが良い練習台になるのだ。そして、数多くの経験をこなし上達した技術を機械に覚え込ませていくのだ。
クラウドで自動アップデート
AI(人工知能)を使ったプラットフォームは、クラウドで管理され、世界中の熟練技術や、人の骨格・髪質などが自動アップデートされていく。世界の髪の毛・ヘアー情報も同時に集まるプラットフォームだ。
カットマシーンで儲けることもできる。
また、スタイリストは、技術供与をする代わりに、定額報酬をもらえる仕組みだと安心して技術を向上させられるだろう。プラットフォーム部分でも、様々な企業が参加して儲ぐ仕組みが考えられる。よく研究してほしい。
仮に、このイノベーションを起きなくとも、無料で髪の毛を切らせてもらって高めた技術力は、お客様から強く必要とされる。また、無料は一番のマーケティングだ。返報性が働きリピートの可能性も高まる。
カットレベルが高くなれば口コミで広がりやすい。下手なマーケティング費用もいらない。インスタやLINEなどで勝手にマーケティングされやすくなる。
ミルキヅク