前回は、理念を日々の生活の中で磨くために進化、安定、成長の視点が大事だと伝えた。そして、安定を実現するものが進化だ。
では、進化とは何か?進化とは、常に無くならない本質的なニーズの追求だ。
例えば、車は世界中で何千万台と売られているが、車の本質的なニーズは何であろうか?まず、車の一般的なニーズを簡単に列挙する。
- 移動手段
- ドライビングそのものの楽しみ
- プライベート空間
- 自慢するため
そのうち、常に無くならない本質的なニーズが『移動』であると仮定し、そのニーズを深堀する。『移動』の目的は何であろう?通勤、通学、運搬、デート、ドライブなどがある。こういったニーズは将来も当分は無くなりそうにない。
次に、『移動』をさらに進化させるために、早さ、快適さ、利便性、安全さ、安さ、運搬量などが求めれる。車産業は、そういった視点でいろいろな製品を開発している。
しかし、さらなる深堀が必要だ。「進化」という視点を捉え間違えると安定は実現しない。
生命体が移動する本質的な理由は何か?
生命体が移動する本質的な理由
それはエネルギーの獲得である。食物を得て自分の生存を維持するためだ。植物は移動しないと思っているかもしれないが、葉っぱは、太陽へ向かって移動する。葉緑体というエネルギーを効率よく生成するためだ。
我々は、生命を維持するために車には乗らない。しかし、移動の本質的なニーズが生命維持のためのエネルギーの獲得が目的ならば、かならずしも『車』という手段である必要はない。生命を維持するためのエネルギーの獲得方法は様々ある。人間で言えば、主に農牧で食糧を獲得している。
では、エネルギーを獲得するための移動が不要になれば、あらゆるものは移動しないのか?
食物からエネルギーを得る必要がない宇宙人がいるとしたら、何のために移動するのだろう?宇宙人が地球に移動してくる目的は何であろうか?知的好奇心を満たすためだろうか?すると、移動の本質は、知的好奇心の満足だろうか?すると、知的好奇心が満たされている神さまは移動するのか?神がいると仮定したら、全知全能の神は移動せず、あらゆる空間に存在していると仮説することもできる。
何のために本質的なニーズを満たす議論をしているか?
何のためにこの議論をしているか話を戻そう。
理念を日々の生活の中で磨くために進化、安定、成長の一連の視点が大事である。そして、安定は想像力と創造力を屈指した日々の創意工夫という進化で実現する。お金でまわる経済において、安定とは、進化によって得られ、進化は、人間の本質的なニーズを満たすことで実現する。
そこで「本質的なニーズとは何か」について深堀を続けている。
本質的なニーズを深堀していないと、ある日突然、経営や生活が不安定になる。例えば、移動の本質的なニーズが知的好奇心の満足が正解ならば、車の本質的ニーズを移動と捉えている会社は衰退することになる。
例えば、A地点にいるある人が、B地点に移動することなく、知的好奇心を満たせたなら、移動は不要になる。グーグルアースや、世界の車窓を見て旅行した気分になり、実際に移動が発生しなければ、その二つのメディア媒体が移動の本質的ニーズを満たしたとも仮説できる。
生き残る車メーカーとは?
車の本質的なニーズをただ単に『移動』と捉えている車メーカーは衰退すると仮説できる。では、車産業が生き残るためにはどうすればよいか?
もう一つの大事な視点は、積み上げた技術を別の本質的なニーズの充足に適応させることである。
車メーカーが積み上げた技術とは何であろうか?その技術を細かく仕分けして、それぞれの技術は、常に無くならないどんな人間の本質的なニーズを満たすことができるだろうか?
さて、「知的好奇心を満たす」が人間の常に無くならない本質的なニーズと仮説して技術を磨いている会社があるとすれば、移動媒体にそのコンセプトを標準装備してくるだろう。
一つの仮説に、インターネットが知的好奇心を満たす最適なツールであれば、移動媒体にどんどん組み込まれていくはずだ。移動すること自体はもはや本質的なニーズではなく、移動中の仕事やエンターテイメントにおける知的好奇心の満足を満たせるツールを提供する会社が現在の車メーカーを襲うだろう。
移動中に快適に仕事をしたり、安全をまったく気にすることなく知的好奇心を満たすエンターテイメントを楽しみたいというニーズは消えないと仮説できる。
グーグルやアップルが車産業に参入できるのも、『移動』の本質的なニーズを満たすものが車でないと気づいているからかもしれない。
カメラの本質的なニーズとは?
さらに常に無くならない本質的なニーズを見つける練習しよう。カメラが満たそうとしている本質的なニーズは何か?人はなぜカメラを買うのか?シンプルに、その本質的なニーズは『記録』だと仮定しよう。『記録』は人間自体がすべてのデータを記録できるコンピューターにならない限り、本質的なニーズであり続ける。
そう考えた場合、『記録』という本質的ニーズを満たす手段は、何もカメラに限らない。かつて、アナログカメラとデジタルカメラがあったが、デジタルカメラが市場を食っていった。アナログカメラメーカーは、記録という本質を見間違えた。現在はスマホカメラが『記録』という本質的ニーズを満たしている。
そうすると容易に想定できるのが、スマホカメラからスカウターカメラに移り、人体埋め込み式の一生を記録できるツールが主流になってくるだろう。眼球に被せるか、脳に埋め込むモノかは不明だが、製品の切り口としてはそうなっていくと予想できる。
アナログカメラは一部残っているが、それはもはや『記録』という本質的ニーズではなく、別の、ニッチなニーズを満たして生き残っている。生き残っているアナログカメラメーカーが気づいているそのニッチな本質的なニーズが何かおわかりだろうか?想像してみてほしい。
仮に、本質的なニーズを見誤ってビジネスがじり貧になっても焦る必要はない。今まで積み上げた技術を無駄にしないためにも、 既存技術を常に無くならない人間の本質的ニーズへ当てはめる練習をすると技術は必ず生かされる。それは存在するすべてのモノに価値があるという自然の摂理に基づいている。
あなたの会社でも、何かの本質的ニーズを満たしていた技術を横展開して成功した事例はないだろうか?あなたのスキルも同じだ。一見、ニーズがなくなってしまったスキルを別に応用して、また強く必要とされたことはないだろうか?
仁丹の技術を本質的にニーズに当てはめる
別の例として、仁丹という商品はコレラの予防から始まった。コレラが無くなると消化と胃腸を健やかにするツールとして変革した。要は、『病気の予防』から、『健康』に本質的なニーズを設定した。しかし、『健康』という切り口は競合が多すぎる。そこで、仁丹を製造するコア技術を横展開した。そのコア技術とは「継ぎはぎなく閉じ込める技術」であり、それは、シームレスカプセルとなり、シロアリ駆除やレアメタル回収などに応用されている。継ぎはぎなく閉じ込める技術が満たそうとする人間の本質的なニーズをより上位概念で捉える訓練は続けなければいけない。白アリ駆除やレアメタル回収は上位概念ではないからだ。
「継ぎはぎなく閉じ込める技術」は、健康や害虫対策以外のどんな人間の本質的なニーズを満たせるであろうか?
もう一つ練習として、傘が満たそうとしている本質的なニーズを考えてみてほしい。
みなさんも、現在の仕事は人間のどんな本質的ニーズを満たそうとしているか熟考してほしい。安定を揺るがす未来のリスクが垣間見えるはずだ。
「進化」についてイメージできたであろうか?
もう一度話を戻そう。「進化」はあなたの理念に基づいたものだ。そして進化はあなたの理念を磨くための一つの切り口だ。進化によって精神的にも経済的にも安定を実現することで、安心して理念を深めることができる。さて、あなたの理念は人間のどのような本質的なニーズを満たそうとしているだろうか?
進化の先にあるもの
「進化」の先には変身がある。それは人間が超人類にステップアップする瞬間だ。人間は常に快適さを求める。生物の進化は海から始まり、陸、空へと向かった。今は宇宙だ。進化の過程で、水抵抗、空気抵抗、電気抵抗など、あらゆる抵抗という不快さと格闘してきた。宇宙には時間抵抗や時空抵抗がある。それを解決した先にどんな世界があるのか想像してみてほしい。
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