これは、衣食住の星に住んでいる3人の物語です。
登場人物
食子…食物を耕す人
服男…服をつくる人
家太郎…家を建てる人
衣食住の星の3人
「衣食住」という名の星に、3人が暮らしていました。
みんな、それぞれが、「服」を作ったり、「家」を建てたり、「食べ物」を耕したりしている。
この星では、効率性を考えて、
それぞれが、「役割分担」で仕事をしていました。
衣食住の星は、特殊で、
一日でも食べないと、すぐに死んでしまい、
服がないと、寒さで死に、
家がないと、寝ている時に猛獣に殺されてしまう、
とても、厳しい星。
ある日こと、服を作っている「服男」のとこへ、
食べ物を作っている「食子」がやってきました。
食子:「はい、服ちゃん、これ、1年分の食べ物ね」
服男:「ありがとう、食ちゃん。これ、1年分の服だよ」
食子:「かわいい服! いつも、本当にありがとね。」
服男:「あ、そうそう、これ、家太郎の服。申し訳ないけど、ついでに持って行ってくれる?」
食子:「うん、わかったわ」
後日――
食子:「家太郎、今日もがんばってるねー。」
家太郎:「やあ、食ちゃん。ひさしぶり。元気だった?」
食子:「あら―素敵。これが、今年の家なのね。」
家太郎:「そうだよ。傑作でしょ?」
食子:「そうそう、これ、服男さんからよ。それと、これ、今年の家太郎の食べ物よ」
家太郎:「おー、待っていた! 服が穴だらけだったから、新しいのがほしかったんだ。食物もありがとう」
家太郎:「服男にもよろしく伝えてね!」
食子:「わかったわ。」
こうして、衣食住の星には、平和な暮らが続いていた……。
家太郎の様子がおかしい…
ある日から、
家太郎の様子がちょっとおかしくなりました。
家太郎:「うーん。食べ物とか、服とかも大事だけど、家って一番重要だよなー。これがないと、すぐに猛獣に殺されて死んじゃうからなー。」
「そう考えると、家や服の2倍の対価をもらわないと、割に合わないよなー。」
家太郎はそう考えるようになっていきました。
ある日の午後、いつものように、
畑を耕している食子のところに家太郎が来ました。
家太郎:「やあ、食ちゃん」
食子:「家太郎さん、どうしたの?めずらしいわね。」
家太郎:「突然だけど…、これからも、食子の家を作ってあげるけど、
2年分の食料をくれない?そうじゃないと、もう作れないよ。」
食子:「何言ってんのよ!!あなた、この星で、
食物をつくることが、どれくらい大変か知っているの(怒)」
家太郎:「知ってるさ。俺だって作ったことあるからね。
でもね、やっぱり2年分じゃないと、割が合わないと思うんだ。」
食子:「もう、いいわよ。好きにすればいいじゃない!!!
あなたにはもう頼まないから。服男に家を作ってもらうから。」
家太郎は、しぶしぶ帰っていった。
数日後――
服男が服を作っているところに、食子が訪ねてきました。
食子:「こんにちは、服男さん。」
服男:「やあ、食ちゃん、どうしたんだい?浮かない顔をして。」
食子:「突然なんだけど…、来年の私の家は服男が作ってくれない?」
服男:「どうしたのいきなり。家は家太郎が作ってくれているじゃん。」
食子:「そうなんだけどさー、家太郎ったら、2年分の食事をくれないと、家を造らないって言い出したんだ」
「だから、私、家太郎にはもう頼まないわって、帰ってきちゃったの。」
服男:「そうだったのかー。しかし、困ったなー。家は作ることできるけど、おれたちの服は誰が作るんだい?」「服がないと、おれたち寒さで死んじゃうよ。」
食子:「。。。」
服男:「ちょっと俺、家太郎のところに行ってくるよ。」
その日の夜――
「やあ、家太郎!」
家太郎は、もくもくと木材を切っていた。
家太郎:「おう、服ちゃん、どうしたんだい?」
服男:「聞いたよー。2年分の食事じゃないと、家を造らないって?」
家太郎:「ああ、そう言ったよ。だって、そう思わないかい?家がないと、みんなすぐに死んじゃうんだぜ。しかも、技術的にも一番難しいんだぜ」
服男:「そうだよなー、家太郎。その通りだよ。俺たちは家がないと死んでしまう」
「でも家太郎、よく考えてみなよ。俺たちの体は1つしかないし、使える時間もみんな同じなんだよ。」
「もしも、お前が2年分の食事を要求すると、今度は、おれに食事が回ってこなくなって、結局、おれが死んでしまうんだ。そうすると、作りたくても、家太郎の服が作れないじゃないか。」
家太郎:「あ、そうか、、、おれは、なんて馬鹿だったんだ。。」
服男:「わかってくれればいいんだよ。確かにお前の仕事はとっても重要。
でも、この星では、俺たち3人でなんとか、やっているじゃないか。
だから、2年分なんて、言わないで、半年分の食事でも家が作れるように考えてみなよ。家太郎ならきっとできると思うから!」
「そしたら、食子、とっても喜んで、今度は、食子が1年分の食事を半年で作れるような工夫をするかもしれないぜ。」
家太郎は、何かに気づいた顔をした。
服男:「おれ、聞いたことあるぜ。昔、ある惑星では、「お金」って
いうものがあったみたいだけど、あまりうまく機能してなかったみたいなんだ。」
「役割分担をしながら生きているっていう基本原理を忘れてしまうんだな。そうやって、自惚れたり、感謝の気持ちを忘れると、大事なものを見失ってしまうんだ。」
「昔どこかの惑星で失敗したこと、おれたちは繰り返すのやめようよ。」
家太郎:「服男、ありがと。俺、どうかしてたよ。」
服男:「いいんだよ。俺だって、そういう気持ちになることだって、
よくあるんだから。お互いさまだよ。」
家太郎:「明日、食子に謝りに行ってくるよ。」
「来年から、より少ない食物で、もっといい家を早く提供できるように工夫してみるよ。」
服男:「お、イイねー。さすが家太郎!」
こうして、衣食住の星の人たちは、
末永く、仲良く平和に暮らしたそうな。
めでたし、めでたし
ミルキヅク