1つの公式

物理の公式には、掛け算、割り算が多くある。

 

 

掛け算とは、かける性質を付与することだった。

割り算とは、分母の世界から分子を見ることであった。

 

一方、割り算は、ひっくり返してかける掛け算でもあった。

要は、割り算も、掛け算だ。

 

つまり物理の公式は掛け算である。各性質を掛け合わせている

 

 

そして別の意味の要素は足し引きされる。

 

 

では、流速を表すマニングの式を観察したい。

 

 

本題に入る前にこんな疑問を持ったことはないだろうか?

 

 

リンゴを高いところから落とすと、速度が増す。

 

仮に、高さが無限であればリンゴの速度は光の速度に到達するのだろうか?

 

ならない。それは空気抵抗があるから。

 

 

では、空気がなければ速さは無限になっていくのだろうか?

 

 

 

同じ様に、川の流れ。

 

上流から流れてくる水の速度は光速になるか?

 

光速とはいかなくても、高速になり続けるか?

 

 

 

水の速度

さて、水の速度を決める要素は何だろう?

 

イメージだけで抽出してみたい。

 

 

まず前提として、重力だけあって空気がない空間とする。

 

 

すぐに思い浮かぶ1つ目が『勾配』。

 

ジェットコースターや滑り台でも勾配がきついほど速度がでる。

 

それは重力の影響をうけやすいから。

 

 

勾配の最大は90度。

 

鉄球を真下に落とすイメージだ。

 

角度が90度なら、重力の影響をそのまま受ける。



一方、鉄球を水平の台にのせる。

 

この時、勾配は0度。

 

重力の影響を受けるが鉄球は進まない。

 

ただし、上向きに重量と同じ力が働く。

 

これを垂直抗力と呼ぶ。



垂直抗力は、作用反作用でいうところの反作用のことである。

 

 

作用反作用とは、壁を手で押したら、壁からも同じ力が手に加わるというもの。

 

もしも反作用という力がなければ、壁を押している感覚はない。

 

 

大地に立っているという感触があるのは、大地から自分の体重と同じ力が体(足の裏)に作用しているから。

 

人体は、その重さを支える強度を持っている。

 

 

手で押す力を重力と見立てれば、垂直抗力は壁から手に伝わる力である。

 

垂直抗力は重量の反作用といえる。

 

 

 

勾配が90°の時は速度が最大になり、0度の時は速度が最小になる。

 

 

 

では、勾配を45度にしてみよう。

 

仮に重力を1にすると、青の垂直抗力はどのくらいになるだろう?

 

 

鉄球が真下に落下する時の垂直抗力は0。

水平の台に乗っている時は重力と同じ1。

 

したがって、垂直抗力は0より大きく、1より小さい値になる。

 

ここで、三角比の出番。

 

重力という黒の力を、赤と、青の垂直抗力に分解する。

 

すると黒赤青で構成された三角形ができる。

 

 

重力1を斜辺としたら横が垂直抗力。

 

よって、垂直抗力=con45° ≒0.7

 

重力の70%のぐらいの力が滑り台から鉄球にかかっている。

 

一方、sin45°も≒0.7なので、重力の70%の力(赤)で滑り落ちていく。

 

 

このように勾配は速度に影響を与える。

 

 

 

摩擦抵抗の強さ

ところで、鉄球がすべり落ちる時に床がツルツルだと速度が出やすい。

 

逆に、ザラザラしたり、ねちょねちょしていると速度が出にくい。

 

つまり、摩擦が多いほど速度が出にくい。

 

したがって、速度に影響与える2つ目の要素は『摩擦抵抗の強さ』。

 

 

 

摩擦抵抗の面積

速度に影響を与える3つ目の要素は『摩擦抵抗の面積

 

鉄球は接触面が少ないのでイメージしずらい。

 

 

 

そこで、鉄球を水に見立てるとする。

 

ここに、摩擦抵抗が違う水路がある。

 

ツルツルした水路は摩擦が少ないので速度が出やすい。

 

これは摩擦抵抗の強さの話。

 

一方で、水がどれだけ摩擦面に接触しているかも流速に影響を与える。

これは『摩擦抵抗の面積』の話。

 

 

流速に影響を与える3要素を適当にイメージしてみた。

  1. 勾配
  2. 摩擦抵抗の強さ
  3. 摩擦抵抗の面積

 

 

 

マニングの式

さて、流速を表すマニングの式を見てみよう。

 



言い換えると、

 

 

 

 

見た瞬間に頭がクラっとくるだろう。

 

 

しかし、順番にみていこう。

 

まず、左辺のVは、velocityで、速度を表す頭文字。

 

それが右辺の3要素で求まると言っている。

 

 

3要素とは、n、R、I。

 

Iは勾配

nは粗度係数 (摩擦抵抗の強さ)

Rは径深 (摩擦抵抗の面積)

 

最初に流速に影響与えると予想した3要素そのものである。

 

 

逆に、それ以外の要素は必要なく、流速が求められると言っている便利な式である。

 

 

 

分母のn(粗度係数)について

 

まず分母のn(粗度係数)から見ていこう。

 

 

反比例のグラフを覚えているだろうか?

 

xが増えるほど、yが減るというものだ。

 

ここで、粗度係数nをxで見立てる。

yを流速vとする。

 

 

すると、粗度係数nが大きいほど(右に行くほど)、流速が遅くなることがわかる。

 

 

つまり、水が流れる表面がザラザラするほど速度が落ちるというわけだ。

分母は値が大きくなるほど、全体の値は小さくなる。全体の値とはここでは流速Vのこと。

 

 \dfrac{1}{1}=1

 

 \dfrac{1}{\color{red}{10}}=0.1

 

 

粗度係数が大きいとは、ザラザラ度が強いということだ。

そして、ザラザラ度が強いということは分母が大きいということ。

 

分母が大きいほど、流速vは小さくなる。

 

 

粗度係数の例

現場打ちのコンクリート 0.015

塩化ビニル管 0.01

アスファルト 0.013

非常に不整正な断面, 雑草, 立木多い自然水路 0.1

 

ツルツルの塩ビ管は0.01

ゴツゴツした自然水路は0.1

 

自然水路の方が数値が10倍大きい。0.1>0.01

*小数は0に近いほど数字が大きいので注意。

 

つまり、その他の条件が同じなら、自然水路は塩ビ管の \frac{1}{10}の速度になる。

 

水がツルツルした塩ビ管を流れる時、岩や小石や土でゴツゴツした川を流れる時では速度が変わることがわかるだろう。

 

 

粗度係数nは分母にあるので、摩擦抵抗の強さによる流速の減り方は、反比例のグラフのようになると言っている。

 

 

 

一方、分数は割り算であり、割り算はひっくり返してかける掛け算。

 

だから、粗度係数は分母にあるが、見方を変えれば「摩擦抵抗」という、速度を変化させる性質をかけているとも解釈できる。

 

\dfrac{1}{n}=n^{-1}

 

よって、

 

 V=n^{-1}\times \displaystyle R^{\frac{2}{3}} \times \displaystyle I^{\frac{1}{2}}

 



 

 

 

 

分子の勾配Iについて

次にマニングの式の勾配Iを見てみる。

 

Iは分子にあるので数字が増えるほど流速Vは早くなる。

 

つまり、勾配の数値が高くなるほど流速は早くなる。

 

勾配Iはルート。

 

指数が分数がルートのことなので

 

 \displaystyle I^{\frac{1}{2}} \sqrt{I}のことである。

 

 

 y=\sqrt{x}のグラフを見てみよう。

 

単調増加ではなく、横軸xが増えるほど、yの増加が鈍化する。

 

つまり、勾配は0°に近いほど、少し勾配をつけるだけで速度が増しやすいと言っている。

 

だから、道路の勾配は少しの変化で流速に大きな影響を与える。

 

 

勾配とは?

勾配が1%とは、横100cmに対して高さ1cm

 

 

100%勾配とは


この時角度は45。

 

45°の時、重力の70%の力が赤い線に働いた。

 

 

 

 

この時、ちょうど \displaystyle I^{\frac{1}{2}}は1になる。

 

傾斜ランキング1位 十番坂 41%らしい。

 

 

 

 

径深Rについて

次に摩擦抵抗の面積である径深Rを見てみよう。

 

 \displaystyle R^{\frac{2}{3}}

 

 

指数の \frac{2}{3}は一見複雑に見える

 

 

しかし、分母の3は、単に3乗根と言っているだけ。

補足:3乗根とは、ある数を3回かけて3になる数のこと。

 

 \sqrt[3]{R}

 

 

分子の2は、ルートの中の数Rの指数。

 R^{2}

 

 

以上をあわせて

 

 \sqrt[3]{R^{2}}

 

 

こちらもグラフを見てみよう。

 

 

まず最初に、2乗根 \sqrt{x}と3乗根 \sqrt[3]{x}のグラフを比較する。

 

 

 

横軸は1までは乗根の値が大きい方がyの値が大きい。

 

 

 

次に、2乗根 \sqrt{x}とマニングの径深 \sqrt[3]{x^{2}}と比較する。







いずれにせよ、次の事が言える。

  1. 勾配、摩擦抵抗の面積(径深)も、横軸xが原点0に近いほどyの上昇率が大きい。
  2. 横軸xが原点0から遠ざかるほど、速度は増えにくくなる。

 

 

 

径深Rって結局何?

 

径深とは、水の面積にどれだけ摩擦面が接触しているかである。

 

式は

 

径深=流積÷潤辺

 

流積:水色の面積

潤辺:水に接触しているオレンジの全長

 

潤辺が分母なので、つまり、潤辺あたり、どれだけの水の面積(流積)があるかである。それは水深ともいえる。

 

 

 

例えば、水の面積(流積)が同じだとしよう。

 

水路が縦長と横長、どちらが流速がでるだろう?

Aの方が水の面積(流積)の大半で摩擦抵抗を受けるので流速がでにくい。

これが径深の値が低いという意味になる。

 

たとえば、水の面積を1とする。

Aの潤辺(オレンジの長さ)を10

Bの潤辺を5とする。

 

すると、

 

Aの径深は、流積÷潤辺なので、1÷10=0.1

Bは、1÷5=0.2

 

径深は分子にあり、Bの方が値が大きいので、流速が早い。

 

 

もう一度マニングの公式を見てみよう。

 

 

 

 

最初に見た時よりも少しでも抵抗感が減っていればよいだろう。

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