「値決めは経営である」という、稲盛氏の名言がある。しかし、その「値決め」の切り口がわからない社長や営業は多い。案外、値付けは、適当で、ざっくりだ。
値決のポイントは、事業の形態によって変わる。まずは、このことを、よく理解することだ。
事業には、「見込事業」と、「受注事業」と鋭い切り口を示した名著がある。
こちらだ→社長業
見込事業の価格決定権は『売主』にある。
『社長業』の本に、”見込事業では価格決定権は売主にある”と説明されている。
商品が、「唯一」であるほど、売主の決定権は強くなる。例えば、ポルシェ、フェラーリなどは、ほぼ完全に、売主が価格決定権を持つ。嫌なら、買わなければいいのだ。
それができるのも、商品サービスが「唯一」であるからだ。
たとえば、ポルシェ911マニアは、「それ」がほしいのだ。見込事業で大切なことは、誰に対してそれを売るか明確にすることである。そうでなければ、値決めで罪悪感が生じる原因となる。こんなに高くしてもいいのだろうか?と。
商品の値段を決める時は、次の2つを意識する
1.その価値を認めるターゲット顧客の明確化
2.その顧客の購買力
例えば、ある時計会社が、限定時計を5つ作るとする。
ターゲットは次のように設定する
- 華僑の超富裕層で
- 大事な時を共に刻みたい人と
- ここぞという瞬間につける時計を探している人。
価格は、1個1億円。
購買力をよく考えよ
基本的にどれだけ商材が良くても、購買力がなければ買われない。たとえば、ターゲット顧客の購買力が1億円もないのに、1億の時計は売れない。例外として、頭がおかしくなるほど魅力的すぎると、借金をしてでも買うかもしれない。
ターゲットを明確にせよ
また、ターゲットを明確にしないと、高いだの、安いだの、ターゲットでもない客の雑音にブレたりする。
ターゲットが明確であるほど、誰に何を言われようと、この価格で、この人に売る!
という信念が固まり、そこから、販売方法も明確になる。
お試しが大事
また、見込事業では、「試し」が大切だ。サンプルの事だ。もちろん、サンプルを作る前に、先受注できれば最高だ。商材の価値伝達とターゲットが明確であれば、高確率で、前受注できる。
一方で、受注事業では、”売り主に価格決定権はない”と説明されている。ただし、QCDのどれか一つが、他社に絶対勝ち、それが、お客様の唯一の購買理由であれば、価格決定権を得られる。
Q=品質 C=価格 D=納期
例えば、業界で、通常納期1か月かかるところ、1時間で、できるような会社だ。ある商品が絶対に1時間後に必要な場合で、他社ができない場合は、値段を高くできる。
受注事業の大事なポイント
受注事業の本当のポイントは、2つある。
1.指値で受注しても利益が残る体制にすること
2.粗利を最大にする、お客様のQCDニーズがどれかを把握して、的を絞って改善する
納期なら、納期
価格なら、価格。
品質なら、品質。
可能であれば、そのどれかで、№1をめざしてほしい。
すると、QCDにサービス名がつけられ、それがやがてブランド化し、商材のような感覚で売ることができる。
QCDは、製品でないのに、製品のように販売しているサービスは思いつくだろうか?
典型例が、郵便局の「速達」だ。これは、QCDのDを差別化したサービスだ。『速達』はサービスだが、サービス名がつくことで、まるで商品のように売られている。
事業の2つの形態を理解するだけでも、「値決め」の考え方は明確になる。
社長になる方は、ぜひ以下の社長業を熟読してほしい。
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