現実感覚と数学概念とのギャップ
数学は哲学的な学問である。だから数学者には哲学者も多い。
数学の考え方は合理性があれば自由でよい。
ユークリッドは点とは部分をもたないものと定義した。
ところで、「部分をもたない」とは「無い」という意味か?
「無いのにどうして、点が有るのか?」と哲学的な議論になる。
ユークリッドの定義によれば、線は幅を持たない長さ。
線は幅を持たない点で構成されている。
「なぜ部分を持たないのにそれが連なって長さになるのか?」
しかも、幅がない長さに、今度は幅方向に長さを付与すると面になる。
そして、その面に「高さ」を付与したものが立体だと定義されている。
すると、数学の空間は、部分を持たない点から始まり、部分があるように見える立体を構成する不思議な空間だ。
なぜ部分がない点で構成された空間の中を移動できるのか?
まったく不思議な空間だ。
一方、現実世界は、原子や素粒子という部分あるものから立体が構成されている。
このように数学の概念が作り出す世界と、現実にはギャップがある。
確かに、1つのリンゴは想像できても、-1個のリンゴやかけて自身になるのようなリンゴはイメージしがたい。
脱出マジック
ここで一つ面白い空想をしてみよう。
前提として、3次元は立体。2次元は面。1次元が線、0次元は点とする。
仮に、二次元の面の世界に生命体がいたとする。
二次元は厚み(もしくは高さ)がないので生命体という立体をイメージしずらいが、モニターに映る人みたいなものを想像してほしい。
モニターも立体だが、仮に厚みのない2次元の平面ディスプレイに映る者をイメージしてほしい。
3次元に住む我々が4次元をイメージできないように、2次元の生命体は、3次元を知覚できないとする。高さや厚みという概念をもっていないからだ。
今2次元の人が、2次元の世界の箱の中に閉じ込められているとする。
閉じ込めた2次元の人は、高さ概念がないので箱は1本の線に見えるだろう。
(*箱の横の長さを高さととらえてほしい。ややこしくてごめん。)
この状態で3次元の人がイタズラをしてみる。
箱から2次元の人を厚み(高さ)方向にちょいっと移動させてみる。
3次元の人は、抜け穴だらけの箱から簡単に脱出させることができる。
他の2次元の人からみれば、突然目の前の人が消えたように見える。
同じように考えれば、4次元の存在体は3次元の人を簡単に4次元方向に移動させられそうだ。
しかし、実際となると、3次元の我々は厚みを持たない2次元(ホロスコープのようなもの)に触れることができないように、4次元の存在体も3次元の我々に触れることができないかも知れない。
箱にぴったり入る?
さて、線に幅が無いとすれば次の問いはどうだろう?
幅が5cmのカステラがある。外径が5cmの箱に収まるだろうか?箱の壁の摩擦抵抗は0とする。
現実世界の感覚で考えると変な感じがしないだろうか?
ピザを3等分できる?
次のケースはどうだろうか?
目の前に100gの丸いピザが1枚ある。
3等分すると33.33…gになる。
しかし、現実世界のナイフは幅があるので33.33…gより少なくなりそうだ。
数学世界のナイフの切り口は幅のない線としよう。
その場合、33.33…gとぴったり切れそうだ。
しかし、33.33…gが3つでは99.99…gとなって100gではない感じがする。
そもそも33.33…gと3が永遠と続く1ピースとはどんな状態だろう?
また、33.33…gは等分できていると言えるのだろうか?
仮に現実世界に物質を構成する最小物があるならば、その最小単位を3等分できればぴったり割り切れそうだが、最小物なのでそれ以上分けられない。
最小物が1だとすると1÷3=0.33…で、やはり3が永遠と続く。
これはぴったりと割り切れていないイメージがする。
やはり現実世界の感覚で考えると整合性が取れなくなる。
しかし、ここに360°という数学概念を使うと3等分できる。
360°÷3で1枚120°のピザが等分される。
不思議な感じがしないだろうか?
なぜgで考えるとだめで、度数で考えるとよいのか。
先入観を知覚する
先入観にとらわれていると数学が苦手になることもある。
先入観とは思い込みであり、その思い込みが理解を遠ざける。
ところで100gのピザを3等分すると、1枚33.33…gになる。
3等分したものを足し合わせると99.99…gとなる。
120度のピザを3枚合わせると360度で1枚100gのピザに戻る。
数字だけ見ると99.99gと100gは違う。
しかし、確かに100gから切り分けたので99.99…gは100g。
表現が違うだけ。だが、しっくりこない。
そこには、99.99gと100gは違うという先入観がある。
数学が苦手になる要因として次の2つを伝えた。
- 数学世界と現実とのギャップ
- 先入観
その2つを意識しつつ、シンプルな問いから始めていきたい。
まずは「かける意味」からだ。